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文法の価値


 

よく英文法を通じた英語学習は批判の的にあいます。

 

 これまでの英語教育の中で、日本人は英語を話せないと言われてきました。

 

 そしてその原因は「文法中心の授業が展開されてきたから」というわけです。

 

 しかし、現在の文法の授業は昔に比べるとかなり進歩しています。

 

 単に文法事項の暗記というわけではありません。それについては明日、詳しくお伝えします。

 

 

 

 昨日、母語と同じ過程で第二言語を学習することは難しいと言いましたが、それに3つの原因をあげました。今日は、その3つの原因に対して文法がどのように有効に働くのかを論じていきます。

 

 

 

1.インプット量の違い

 

 第二言語を学習する際のインプットの量は限られます。学習する時間も限られます。この場合に有効なのが文法になります。文法は、言語のルールを体系化してまとめたものになります。例えば英語を学習する際に、現在完了形という日本語にない考え方の過去形との違いを、英語だけで習得するには相当量の時間がかかることでしょう。また、インプット量を増やしたところで、それが理解につながるとは限りません。

 

 「よく聞き流すだけで第二言語は理解できる!」という教材をよく見かけます。これはインプットを与えれば、言語を習得(学習)できるというものです。果たしてそれが可能なのか、私自身が実験台となりスワヒリ語のマスターに挑戦しています。文法を使わずに、ですから頼るのは映像と音声だけです。現在すき間時間を使って、ひたすらスワヒリ語を聞きまくって一週間が経とうとしていますが、今のところ、スワヒリ語の挨拶すらよくわかっていません。

 

 文法だけをやって英語を話せるようにはなりませんが、だからといって文法を排除する必要はないのです。第二言語では当然、インプットの量は限られますから、その少なさをカバーするためにも体系的な知識としての文法は大切になってきます。

 

 

 

2.母語の存在

 

 母語は第二言語を学習する際には何かしらの影響を与えます。これを母語干渉といいますが、言語間の距離が遠いほど、母語干渉は起こりやすいとされています。日本語と英語に関しては言語間の距離が遠いというのは皆さんが実感されているところだと思います。

 

 日本語と英語で考えた場合、言語間の距離が遠いからこそ、文法は有利に働くのではないでしょうか。

 

 文法を使わずに英語に触れていった場合、語順の違いに簡単に気づくことはできないでしょう。また、語順の違いを指摘されなければ、英語の文を日本語の感覚でとらえてしまうのは当然のことだと思います。

 

 母語の存在は無視できません。母語は第二言語学習に必ず影響します。あるものをない、ということはできない以上、母語を上手に使って文法を説明してあげれば、第二言語学習も効果的になるのでしょうか。

 

 

 

3.認知機能の発達の違い

 

母語を習得していく幼児期と、第二言語を習得する年齢では認知機能の発達状態が違います。日本では英語を学び始めるのは小学生です。小学生から中学生にかけては、抽象的な考え方ができるようになっています。つまり、文法のようなルールを理解できれば、それを実際の文に具体化することができます。

 

  発達した認知能力があるのに、それを利用せずにただ聞き流す。真似をするだけ、というのは非効率な方法だと言えます。獲得した能力を最大限活用し、効率的な学習を進めるためにも、文法は大切な知識となるのです。

 

 

 

  以上のように、文法の利点を述べてきました。先ほども述べたように、文法だけで、第二言語学習は成立しません。もちろん聞いたり、話したりという練習は必要です。だからといって文法が不要だという考えはあまりにも極論です。言語学習の礎として、文法は欠かすことのできない要素だと思います。